今回もまたXPSを借りることができたので徹底的にレビューする。前回はXPS13 9310をレビューしたが、今回の9320はキーボード部分や本体スペックが大きく変化した。魅力はありながらも残念だと感じた部分が非常に目立ったので正直に解説する。ぜひ見ていってほしい。
本ブログは、デルアンバサダープログラムのモニターに参加しています。
contents
Dell XPSとは
まずそもそもXPSとはなんぞや、というところから紹介しよう。XPSは、Dellのフラッグシップ、最上級のPCである。
圧倒的な極薄ベゼルディスプレイ
特徴は、まずディスプレイがとにかく広いこと。今とは当たり前となっている極薄ベゼルだが、XPSは初代からこれを採用し、最新のXPSも尖りまくったディスプレイを採用。画面比率は16:10。
また、画面のベゼルを補足したことで、本体サイズが画面サイズの割に非常に小型。
- 1920×1200 フルHD 非光沢 液晶
- 3456×2160 3.5K 反射防止 有機EL
- 3840×2400 4K 反射防止 液晶
ディスプレイの選択肢は3つ。三者とも色の再現性が高く、明るく非常に綺麗。私がレビューした中では有機ELが最も感動的に優れていると感じている。
高級かつ堅牢なアルミボディ
本体もヨダレが出るほどに美しい。Macと同様アルミ筐体を採用している。また、本体、画面ともに非常に頑丈なのも特徴。画面に至ってはスマホと同じゴリラガラスが採用されている。
スタイリッシュさが魅力
XPSはハイパフォーマンスというよりスタイリッシュさがメインになっており、非常に薄型なのが特徴。その代わりに冷却性能が犠牲となっているのが今までのXPS。
今回のXPSは、薄型筐体ながら冷却性能を圧倒的に向上させている。
また、XPSは端子類もUSB-Cのみで最低限。ここは賛否がありそうだが、個人的には全く問題ない。
New XPS13 9320の特徴
ではここからが今回の、New XPS 9320だ。今回のXPSはキーボードと冷却が見直され、今までのXPSとはまた違った見た目をしている。
また、ディスプレイの黒とパームレスト部分のホワイトがいい感じにマッチしていて、良い。
キーボード周りが大きく変化
今回の魅力はこれに尽きる。キーボード全体がフラット(ゼロラティスキーボード と呼ぶらしい)になり、ホワイトのデザインにさらに統一感を持たせてしまった。
タッチパッドはどこへ?
見てわかるように、タッチパッドが無くなっている、わけではなく、中央あたりがしっかりタッチパッドになっている。クリックの操作はMacと同様触覚タッチに対応。フレームまで無くすなんて、どこまで攻めてんねん。
さらに、上部のファンクションキーもLEDライトで表示、つまり、タッチで操作するようになっている。左下のFnキーを押せばきちんとF1~F12が表示される。この圧倒的未来感。私は好き。
US配列の選択肢もあるが…
Dell XPSの特徴として、JIS(日本語配列)とUS(英語)配列と、2通りの選択肢が用意されていること。US配列信者の私からしたら非常に嬉しい限りだが、今回のUS配列には余計な印字が追加されるらしい。2箇所だけとはいえ、気になる人は気になると思う。
外観(背面に変化)
もう少しNew XPS 9320を観察する。外観はいつものXPS。お得意のシルバーアルミボディが高級感を強く演出している。
背面はXPS9310から大きく変更。もともとは背面に吸気口があったが、XPS9320では横のスリットが吸気口として利用され、前9310より圧倒的に冷却性能が向上している。
今回はホワイトモデルでパームレスト丸々白一色。めちゃくちゃ美しい、と私は感じているが、皆さんはどう思うだろうか。私は最高だと思います。
そして今回のXPSも、13.4インチの超極細ベゼルのおかげでサイズが非常にコンパクトである。これは何度見ても信じがたいくらい。
ただこの薄型コンパクト筐体の割には重量が1.24kgと少し重い。この重さの理由はアルミ筐体というのもあるが、XPSは他のPCと比較しても傷がつきにくく、ディスプレイとパームレストも頑丈である。多少雑に扱っても心配不要だが、流石にこの白筐体を汚したら一晩寝込んでしまうかな。
端子はUSB-C 2ポート だけ
- USB-C(Thunderbolt4, USB-PD)2ポート
今回のXPSは、Thunderblt4に対応したUSB-Cが2発。9310ではMicro SDカードスロットとイヤホンジャックがあったが、それすら搭載せず。
これは意見が絶対分かれると思うが、私は肯定的だ。例えば前回の9310ではMicro SDカードスロットのため、通常サイズのSDカードを使用する人にとっては迷惑な存在だった。ただ今回それらを排除したことで、USBハブで足せばいい、という発想ができる。買い足すとなれば、それぞれのユーザ側でSDカード、Micro SDカード、ディスプレイ出力、等選択肢が豊富になる。
あとXPSはUSB-Cが左右に分散されていて、左右どちらからでも充電ができるのも嬉しいポイント。
開封は豪華
誰にも望まれない開封シーンだが、既に今までのXPSと違っていて、全て紙製の梱包、箱になっている。箱の中にさらにお弁当箱があり、お弁当を開けるといよいよ本体。
本体はまた布に囲われて登場。
付属品
- 60W USB-C ACアダプタ
- USB-A 変換アダプタ
- イヤホンジャック変換アダプタ
充電器は相変わらずの極太とアース付き。もはや紹介するまでもないが、XPSは端子がUSB-Cのみ。今回はイヤホンジャックの変換アダプタまでつけてくれて、優しいね。
本体の充電は60W以上が無難
XPS9320は充電が60Wと少しパワーアップ。もちろんサードパーティ製のUSB-PD充電器も使用可能だが、私の環境では45Wの充電器では警告が出た。
また、私の環境ではUSBハブを介しての充電でも警告が出た。充電器は純正のもの。
どうやら20Vを0.01Vでも下回ると警告が出るらしい。詳細は不明。充電自体は問題なくできるが、あまり気持ちよくはない。
スペックが圧倒的に向上
今回のXPS9320では、CPUがIntel12世代になり、スペックが大きく向上。
CPU | Intel(R) Core(TM) i7 1260P |
GPU(内蔵) | Intel(R) Iris(R) Xe Graphics |
メモリ | 16GB 5200MHz |
ストレージ | NVMe 512GB SSD |
ディスプレイ | 13.4インチ 3456×2160 有機EL タッチ対応 |
本体重量 | 1.24kg |
大きさ | 厚15.3mm 幅295.3mm 奥行199.0mm |
今回の12世代は省電力コアと高性能コアを両方搭載しており、省電力とハイパフォーマンスを両立している。
9320(本機) | 9310(前モデル) | 9510(15インチ) | Macbook Air | |
CPU | Core i7 1260P | Core i7 1185G7 | Core i7 10875H | M1 |
コア数 | 12c16t | 4c8t | 8c16t | 8c |
TDP | 28W | 28W | 45W | 15W以下 |
CineBench R23(si) | 1629 | 1434 | 1511 | 1511 |
CineBench R23(mu) | 9460 | 4093 | 7556 | 6981 |
体感 | 早い | 早い | 早い | 早い |
今までレビューしてきたXPSとMacbookで比較してみた。シングル、マルチ、ともに最も高いスコアを獲得している。特に、筐体サイズの大きい15インチと比較してもスコアが高いのが今回のXPS。
ただGPUはCPU内蔵GPUなので、ゲームをやりたいという人にはおすすめできない。
ファンはかなり静かに
XPSは比較的ファンが静かな方だったが、今回のXPSもかなり静か。また、CPUの省電力性が向上したことにより、簡単な作業では全く回らないこともしばしば。
高負荷時も高音が抑えられ、非常に静かに。排熱、給気口の位置が見直されたため、前回のXPSとは冷却パワーが雲泥の差。高負荷の処理が終わればすぐに冷めるし、高パフォーマンスを長時間ぶん回しても無理をしていない感じ。
ディスプレイは今までで最高クラス
今回のディスプレイも3.5K有機EL。ここは前回のXPS13のときと同じなので詳しくは割愛する。
まず、炎天下の中でも余裕で見えるディスプレイ。スペック上は400nitらしいが、スマホの明るさを超えて明るいため、自称1000nitと言ってもいいくらい。
Macと比較しても明らかに違う。色味は文章の方を参考にしてほしいが、XPSのほうが明らかにリアルでビビットな味付けになっている。解像度も3.5Kあり、文字がくっきりはっきりしている。感動するレベルで綺麗だった。
もちろん超極細ベゼルのおかげで画面の没入感も圧倒的。比較すると本当に違う。
実際の使用感
ここからは実際に私が2週間程度使い続けてみての感想だ。私の利用法としては、
- 大学の課題(Microsoft Office, Zoom, ブラウザで行うテスト、等)
- Nodeを用いたプログラミング、日記、ターミナルの操作
今回もまたブラウザベースの作業になる。動画編集どころかゲームもしていないので過剰スペック感はある。
どこにでも合うデザイン
まずはこの尖りまくったデザイン。特に今回は内側が本当に変化しており、筐体も美しいしディスプレイも最高クラスに綺麗で、使うのが本当に楽しくなる。
しかも13.4インチがこんな筐体サイズで実現できてるのもすごいのよ。可愛い。
スピーカーも一応改善
今回のXPSはスピーカーも若干改善。一見横のスリッドから音が出るように見えるが、実際はキーボードから音が出てるような感じ。
ただ初期状態では微妙な音。高音も低音もスカスカ。低音は音量50%でもボスッボスッと割れるくらい。
MaxxAudio Proで化け物化
DellのPCに標準搭載されている、イコライザで音質をパワーアップさせるアプリがある。これで低音をブーストすると、見違えるほど音質が改善する。イコライザを適用すれば、Macbook Air 2020と遜色ない音質になる。まあノートPCなので期待はしすぎないように。
キーボードは普通に使いづらい
今までのXPSはノートPCの中ではかなり打ちやすい部類に入っていた。しかし、今回はデザイン優先。
ある程度予想はしていたが、キーボードは使いづらいに尽きる。
常識的なノートPC向けのキーボードは、キーとキーの間に隙間がある。しかしXPSはデザインを優先しすぎてキーとキーの隙間が全くない。隙間がないとキーを押す際別のキーを同時に押すリスクがある。
ただこれは意外にもミスタイピングが少なく打鍵が可能である。もっと重要なのは、キーの重さだ。キーの重量が一気に増していて長時間打鍵するのが困難になる。明らかに打鍵の速度も低下している。これが現実。
ファンクションキーとタッチパッドは、当然使いにくい
ファンクションキーは物理キーにしたほうがいいに決まっている。あのMacでさえタッチバーを排除したくらいだし、タッチパネルタイプは多くの人のストレスになりやすいと思う。特に反応位置がシビアで、押しても反応しないことがあってイライラした。掃除用にさっと一吹きしようとすると暴走する。
タッチパッドも同様。触覚タッチで精度も非常に高いが、フレームがないためどこからどこまでがタッチパッドか確認できない。外れると、例えばドラッグアンドドロップの場合、カーソルが押された状態で戻るから意図しない挙動を起こすことがあり不便。また、押し込みのダブルクリックがほぼ皆無。タッチパッドの精度は明らかにMacが勝っていると感じた。
バッテリーは短め
私自身はブラウザやプログラミングと、テキストベースの作業がほとんどだった。この作業を1時間したところ、約20%程度バッテリーが減った。つまり、5時間でバッテリーが切れるという計算。最近のモバイルノートPCとしてはかなり短い。これでもバッテリーモードは三段階中の最も省電力なやつ。
もちろん作業の内容やディスプレイの明るさなどにも影響するので一概には言えないが、モバイルノートPCでこれは少ないと感じた。
ただこれは3.5K有機ELと4Kの場合に限る。フルHDのモデルなら感覚2倍くらいバッテリー持ちがいいらしい。
本体(ハードウェア)が不安定
一番強調して言いたいのが、ハードウェアの安定さだ。そもそも今までこんな事考えずに利用できていたが、今回のDell XPSは動作が本当に不安定だった。もちろん私の個体がおかしい説も否めない。
スリープが使い物にならない
まず、スリープ中に本体が発熱することがしばしば。勝手に発熱して勝手に電源が切れたり、やりたい放題。
そこでスリープ運用を止めていちいちシャットダウンする必要があるが、これもまたひどい。
電源を入れても一度目は正常に起動しないことが毎回発生する。XPSのロゴの画面でブチッと切れて、勝手に強制終了。
ブルースクリーン、初期化する羽目に
そして運が悪いとOSが一切起動できなくなり、一度初期化する羽目になった。さらにDellのPCにはBitLockerという謎の暗号化がかかっているため初期化すら手てずった。こんな不安定なPC使ってみたいですか?
USB接続も怪しい
私の端末ではUSBハブをつなげた瞬間、片方のポートが一切受け付けなくなる不具合が発生。純正の充電器をつなぎ直すことで改善はしたが、USBハブは普段毎日使うものなので、それで動作が不安定になるのはなー、という感じ。Macでこんな事が起こったのは一度もない。
また前述で解説したが、充電にも難あり。45W充電器でエラーが発生してしまうのだ。このPCは最大60Wでの急速充電が可能だが、45Wでエラーが出るのはおかしい。
生体認証も微妙
Dell XPSは電源ボタンの指紋認証と顔認証が搭載されている。しかし、いづれも使いづらい。
指紋認証は一発で認証しない。顔認証は位置があまりにもシビアすぎる。はっきり言って使い物にならない。ただこれはハードウェアの問題でなくWindowsの問題かもしれないので一概には断定できない。
総評:ハードが魅力なのにハードが微妙、という始末
私も認めたくない。本当はべた褒めレビューをしたいところだったが、あまりにもハードウェアの欠陥が多く、普段利用するにもストレスが発生した。期待値が高かっただけあり、今回のXPSは本当に残念。
今回はデルアンバサダーということで1ヶ月間借りられるが、早めに送り返そうと思う。
Dell全般ノートPCは不安定
私自身Dell Inspiron14のコスパモデルも使用していたが、この機種もまた動作が不安定。意図しないときに再起動したり、Windowsすら立ち上がらなかったり。あと指紋認証が一切反応しなくなっている。
この不安定さは上位機種になるほど顕著で、今回のXPSは特にそのエラーが多発。フラッグシップなのに動作が不安定なのは、正直ありえない。
DellのノートPCは誰にもおすすめできない
ハードウェアの欠陥が多かった以上、この機種は誰にもおすすめすることができない。買うとするなら不具合の少ないXPS9310より前のモデルがおすすめ。
というか、もはやDell全般がおすすめしづらい。Dellが新しいPCを出したときに、「BIOS、ハードウェアをイチから見直しました」とならない限り、もうDellのPCをおすすめすることができない。
Macbook Airの安定さを知ると、Dellは無理
最近はメインPCがMac。DellのPCで起こったハードウェアの不具合は、Macでは一切発生したことがない。
またMacbook Airはバッテリー持ちがもう圧倒的に良い。ノートPCを気軽に持ち運んで利用が可能。この快適さはWindowsより圧倒的に優れている。
ここまで来るとXPSに勝ち目はないと感じた。デザインを除けばXPSに勝てる要素がない。というかハードウェアの欠陥がある時点でアカン。逆に言えば、Macを知らない世界線にいたら、ある程度の欠陥も妥協できたかもしれない。
最後になるが、「BIOS、ハードウェアを見直しました」と改善しない限り、もうデルアンバサダーの応募はしないと思う。ただ、もともと私自身は推しのようにXPSを魅力的に捉えていて、デルアンバサダーには本当に価値があった。合計すると約3ヶ月、楽しい時間を過ごすことができた。